ナルシス2世のブログ

エッセイ仕立てに構成。
第一章では高校生時代の入院記を
第二章では高校を卒業してからの職歴と、その中で出会った素晴らしい先輩方とのご縁や学び、エッセイを書く事になった経緯を記録した内容。

荒治療

この先の内容は、俺にとっても読者の皆様にとっても、かなり抵抗があるお話になっている。しかし、俺が痔になる事によって、体験した全てを知って頂く為に続ける。無責任ではあるが、自己判断で読んで頂きたい。

 

診察室で便秘になった経緯を医者に説明した。すると医者は俺のパンパンに張った下腹部を触った後、処置方法を静かな口調で説明した。

肛門から指で硬くなった便を抉り出し、浣腸で溜まった便を排出するといった内容であった。それを聞いて泣きそうになった。日本男児・・・・・排便時の痛みから逃げ続けて来た俺を、この苦痛から救ってくれるのは、その方法しかないのだ。医者は無表情だった。当然である。仕事とはいえ、人の肛門に指を突っ込んで、臭い『クソ』をかき出すのだから。

羞恥と痛みに耐えながら、処理を受けるしかなかった。華の高校生、俺は心の中で泣いた。

処置後に排出された便は、想像を遥かに超える見事な量だった。山の様に積もった下痢便は、和式便器の高さを超えていたのだ。排出される瞬間と、その後の爽快感は最高だった。結果を記録する為、看護婦から便は流さない様にと言われていたので、笑顔で看護婦さんを呼んだ。爽快感は羞恥心ごと綺麗に吹っ飛ばしてくれたのであった。

そして看護婦さんに許可をもらい、綺麗に流し笑顔で病院を去った。その後も便秘症は治らなかったので、浣腸に頼り続けた。浣腸ほど便利な物はない。便意がないからと、焦る事は全く無いのだ。便意を感じない日は、浣腸をしさえすれば強制的に排便ができる。

だが、バアちゃんは教えてくれた。・・・『浣腸をしなければウンチできなくなるよ』・・・俺は浣腸をその日からやめた。

第2章 痔歴書

日記は完結しているが、退院後もイボ痔とお付き合いをしていく事となった。その体験を記録したノートを元に物語は続いていく。

 

新たなる悲劇の幕開け

食生活ではバアちゃんの協力を得てお通じにいい物を食し、夜更かしせずに睡眠は充分にとり、必ず1日1回の大便をするようにした。

ところが、根付いた習慣とは実に恐ろしいモノである。俺は元のだらしない生活習慣に戻りつつあった。そして悲劇は新たな形で繰り返される。

夜更かし、食事時間の乱れから、大便をしない日が3日続いた。大便をしていない事による焦りから、トイレへ行っても排便する事ができなくなっていた。便秘期間が長くなってくると、今度は排便時の痛みの恐怖で大便から逃げる。最終的に追込まれ、勇気を振絞って便座へ腰掛ける。大便はゆっくり肛門から顔を出す。その時、刺す様な痛みを感じた。恐怖した俺は、肛門から少し飛び出した便に触れてみた。・・・とても硬い。

3日間蓄積された便は固くなっていたのだ。痛みに耐えられず、ビビって排便を諦めた。しかしイボ痔を復活させたくない、あの屈辱と地獄は二度と味わいたくない。硬くなってしまった便は必ず、軟らかくして出してやると決めた。ヨーグルト、野菜、アイスクリーム、バナナ、牛乳を摂取し、再び便意を感じるのを待った。その無知な行いが、非常に過酷な結果を招いてしまうとは知らずに。

便意が来るごとにトイレへ足を運んだが、痛みから逃げ続けた。痛みを伴う排便は、もはやトラウマ化していたのだ。この硬い便を排出すれば、爽快感は味わう事ができるが、イボ痔の復活を予期させる。結局1週間も溜めてしまう。前回の長期便秘と異なる点は、ヨーグルト、野菜、アイスクリーム、バナナ、牛乳等の便通に良い物を毎日の様に摂取していた事である。下痢になっていてもおかしくない状態だ。実際、下痢状態だった。しかし、最初に生成された大便が硬くなり、栓の役割を果たしていた為に下痢便を漏らす事なく、腹痛が俺を苦しめ始めた。遂には小便さえも出せなくなってしまった。自分ではどうする事もできなくなり、再び病院へと足を運ぶのだった。

第一章の終わりに

最初から気長に読んでくれた方々は、もう何となく痔(イボ痔)になる可能性の高さや、致命的な事はお分かり頂けたと思う。便秘、食生活、不規則な睡眠、長時間の直立や座り込み、酒、タバコ、冷え、妊娠時や出産時に起こるうっ血など。

それだけ痔になる確率は高く、痔である事に気付いていない人、気付いていないふりをしている人も多い。俺は、痔という病気は恥ずかしいとは思っていない。もちろん自分がならなければ、ずっと不潔なオッサンがなる恥ずべき病気だと思っていただろう。今では出し終えた大便を見ると、その日の自分の体調が何となく分かるようになった。

痔に関する書物で読んだのだが、日本では30%が痔持ちなのだ。これは病院に行って診断を受けた数字なので、実際はもっと多い。アメリカの大病院で症状の有無に関係なく患者さんに肛門診察を行って、80%以上の患者さんから痔が見つかったというデータも出ている。

結論から言うと大半の人間が痔になるのだ。痔に対してコンプレックスを持っている人は落ち込まないで頂きたい。痔は不潔なオッサンがなる恥ずべき病気ではなく、身近な存在である事を理解して頂きたい。不摂生をなるべく避け、食生活にも気をつけていればそんなに神経質になる事もない。

今のご時世、そんな事を気にしていたら、どんな仕事もできないのが現状である。痔になってしまっても、ヨーグルトや食物繊維を多く含み野菜等のお通じに良いものを食したり、お酒やタバコを少し控える等、自分で出来る事はたくさんある。そして、現実を受け止めて闘って欲しいと願い第一章を終わる。