変人的散歩
11/16日(金)手術後第10日目。
爽快な朝を迎え、パワーを持て余した俺は昼食後、再び女神とバッタリ出会う事を期待しつつ散歩に出た。冷静に考えれば院内にいる方が、出会う確率は格段に高いにも関わらず。もちろん今回は出会えなかった。
少し肌寒かったが、昼間は天気も良く太陽の温かみを感じた。大人達は会社で働いている時間、主婦達は買い物や洗濯、もしくは昼寝をしている時間、同年代の学生達は学校にいる時間、俺は優雅に痔の傷跡と仲良く散歩。テンションもあがってきたので、少し足を伸ばし近くのダイエーまで歩いた。ボサボサヘアーでニヤニヤしながら1人、優越感を味わった。
可笑しなことに、優越感を味わうほど人から羨ましがられる様な事は、何1つしていない。18歳という若さにしてイボ痔になり、12日間も入院し、痛みと闘ってきた高校生が学校へも行けず、何のオシャレもできず、ボサボサヘアーで昼間から勝手に優越感に浸ってニヤニヤしながら歩いている。
どちらかと言うと同情する人の方が多いだろう。また、人によっては実にイカれた気持ち悪い変人に写るはず。
そんな当時の俺を見たら指をさして笑ってしまうが、その時は満足していたのだ。日記の字体も楽しそうに、踊った文字で書かれてある。
変人とも解釈できる行動ではあるが、日記を読み返していて、俺はある事に気付いた。イボ痔によって様々な悲劇に遭い、マイナス思考のネガティブ野郎になっていた俺が、プラス思考のポジティブ野郎になっていった変化の現れなのである。実に素晴らしい変化の瞬間かもしれない。
日も暮れ、寒くなったので、変人的散歩を終えた俺は病院へと戻った。夕食後も退屈だったので色々と考え事をした。とうとう明日は退院・・・日記はまだ預けたままではないか。俺は女神の事を考えた。日記を返してくれる時に
『感想を聞かせてくれるかなぁ~』
『何て言ってくれるかなぁ~』
と俺は妄想しながらドキドキしていた。期待に胸を膨らませつつ、変人的散歩ついでに寄ったダイエーで買った新しいノートに想いを記録して眠りについた。
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