ナルシス2世のブログ

エッセイ仕立てに構成。
第一章では高校生時代の入院記を
第二章では高校を卒業してからの職歴と、その中で出会った素晴らしい先輩方とのご縁や学び、エッセイを書く事になった経緯を記録した内容。

華の18歳と彼(9/29)

 事の起こりは1996年(平成8年)929日、我が母校である大阪府立長野高等学校の体育祭までさかのぼる。

 

当時、俺は高校3年生にして華の18歳。小さな頃から体を動かす事が大好きで、特に走るスピードには自信があった。そんな俺にとって、体育祭の短距離走はヒーローになれる華型種目だ。トップでゴールラインを駆け抜ける快感は、一度味わうと癖になる。

湧起こる歓声、優越感、女子達からの熱い眼差し(思い込み)は最高だ。

そう思っていたのだが、意外に人気はなく、短距離走者として希望を出すも即決。高校3年生にもなれば、小・中学校ほど学校行事に熱くならないようだ。俺はしらけるどころか、大マジだった。

午前中に行われた予選は、なんなく通過する。そんな俺ではあるが便秘症という悩みを抱えていた。一見何の繋がりもなさそうな『短距離走』と『便秘症』だが、その後間もなく繋がっていくのだった。

何故、俺が便秘症になったのか。実家にあったトイレは、畳1枚程の大きさ。その圧迫感のある空間は苦手だった。それだけの事で、便意がきても我慢する癖をつけてしまっていた。結果、便意を感じにくくなり、とうとう便秘症になってしまったのである。いきなり汚い話しになったので本題へと話を進める。

 

昼休みに弁当を食べ終えた俺は、3週間ぶりの便意を感じ、トイレへと足を運んだ。普段から便秘症を抱えている俺にとって、3週間くらいの便秘期間は特別な事ではなかった。だが、便意とは裏腹にきばっても力を抜いてもガスすら出ない。

休み時間中の学校のトイレや廊下というものは、とても騒がしい。生徒達の話し声や物音で、神経質な俺は気が散って、排便に集中できなかった。いったん休戦し、静かな別館のトイレへ場所を変えて再戦を試みる事にした。和式の便器に再度またがり、今度こそはと全力できばった。

『プチッ』という小さな音とともに激痛が走り、彼(便)は俺の肛門から勢い良く飛び出した。

違和感を覚えた俺は、彼との対面を図る。なんと彼は日常見かける形ではなかったのだ。鳥肌の立つようなおぞましい形。それは太く短く、美しい程に艶があり、周囲にはイボイボがついていたのだ。

『何じゃ、こりゃ!』

後に医者から聞いた話によると、その形は腸の内側そのものだったのだ。俺は『バリュウム』の代わりに『大便』を使って、『胃の形』の代わりに『腸の形』をリアルに採った事になる。当時は気付きもしなかったが、これはまさに人体の不思議に出会った瞬間であったのだ。

 

恐怖に陥りすぐさま流そうとしたが、少しの興味が恐怖に勝ってしまった。俺はその時、トイレットペーパーを人差し指に巻きつけ、そして突いたのだ!彼は硬く、少々の力では変形すらしなかった。しばらく観察してみるが、形が変で硬いという事くらいしか理解できなかった。名残惜しかったが、静かにレバーを押して流れていく彼を見送った。

 

午後からは、いよいよ短距離走競技の決勝戦。俺は気合十分、興奮気味にスタートラインに立った。合図と共に予選を勝ち抜いた選手達といっせいに走り出す。

ももを高くあげ、地を蹴り、全力疾走するが、みるみるうちに他の選手達の後ろ姿が遠くなっていくではないか。股に力がはいらない・・・例えるなら、必死に走っているのにも関わらず、少しずつしか進めないという【夢の中でゾンビとか怖いものに追っかけられて逃げているのに、全然すすめない感じ】と言えば分かってもらえるだろうか。

結果は散々なもので、圧倒的な差をつけられての最下位。ありえなかった。小学4年生から飛躍的に伸びた身長と共に50M走のタイムが突如速くなった俺は、その頃からほぼ負け知らずだった。クラスに必ず1人はいる、運動会や体育祭などのリレー競技で逆転勝利を導いてくれるヒーローなみに頼もしい奴。小学4年生から中学卒業まで俺はそんな頼もしい奴の1人だった。

ところが、その圧倒的な差をつけられての最下位という結果は、俺の『ランナー』としての『ヒーロー』としてのプライドはズタズタに引き裂いてくれた。原因が全く分からない。何故、この俺が・・・ヒーローになるはずの俺が・・・これは夢か?・・・

スタートしてからゴールラインを駆け抜けるまで、股に力が入らず全力で走れていなかった。その原因は1つしか思いつかない。昼休みに俺のお尻の穴から無理やり飛び出した彼・・・『イボイボウンコ野郎』のせいだ!

アイツのせいで俺のお尻は傷つき、痛みを抑える為にアドレナリンを出し、俺の股の感覚まで麻痺させていたのだ。

便秘症から発生した『イボイボウンコ野郎』は見事に『短距離走』と『便秘症』を繋げてくれた。この【イボイボウンコ野郎の排出】こそが痔になる基盤となっていた事を俺は知る由もなかった。